地域から出る廃棄物を
アップサイクルして作られる「天然素材の土」の誕生まで

地元の林業が直面する問題と向き合う

宮崎県はスギの素材生産量が日本一。上質な角材を目にすることは多いですが、伐採から市場に流通するまでの間に、自然に剥がれ落ちる大量の樹皮が林業従事者たちを悩ませているという現状はあまり知られていません。形を整えるために機械で剥いだ樹皮は形の整ったチップとなり、バイオマス発電や家畜の敷きわらとして利用できます。一方で、自然に剥がれたものは雨にさらされ水分も多く、不純物も混ざり込むため、産業廃棄物としてコストを負担し処理するしかありません。悪質な事業者は山林に不法投棄し、これが土壌汚染につながっていることも問題となっています。

そんな林業従事者たちの悲痛な声を聞き動いたのが、日向市で建築や土木工事を手がける「内山建設」です。代表の内山雅仁は3代目。地域との深いつながりを大切に会社を成長させてきました。

「木々を切り倒し、川岸をコンクリート構造物で覆い、土をアスファルトで覆い尽くすような大規模な建設は、人々の快適な暮らしのためとはいえ、環境破壊と捉えられることも少なくありません。そんな事業を生業にしていることもあり、地元の環境保全や地域貢献への想いは人一倍強いですね」

こうして立ち上げたのが「エコロ」。
地域で発生する林産廃棄物をリサイクルして作られる天然素材の土壌改良材「ひむかバーク(樹皮)」を製造販売する会社です。スタートしたのは2009年。環境保全やSDGsといったワードが叫ばれるようになる以前のことでした。

時間をかけてじっくりと発酵させた上質な堆肥

宮崎大学や地元の堆肥企業などと協力しながら、少しずつ事業が軌道にのってくると、今度は畜産業者から相談が。

「宮崎県は、牛・豚・鶏の生産額が日本2位。家畜から出る糞尿は堆肥にされますが、堆肥化のコストが高いことから不完全な堆肥処理が行われ、堆肥の質が低下。質の悪い堆肥は農家からも嫌煙され、次第に糞尿が滞留…という悪循環に陥っていました」

見かねた内山は、畜産廃棄物も引き受けることを決意します。

いずれも、強制的な火力による乾燥発酵ではなく、トータル的な環境負荷を考慮して時間をかけて自然発酵させる製造方法を選択しているのが最大のこだわり。自然発酵による発酵菌の力を最大限に引き出すことで、上質で安心・安全な堆肥を生み出します。

さまざまな土壌や用途に合わせて使えるバーク堆肥と培養土

エコロで展開する商品は、大きく「バーク堆肥」と「培養土」の2つ。
樹皮が主原料となるバーク堆肥は「ひむかバーク」と名付け、分解されにくく、土壌改良効果が長持ちするのが特徴。肥料成分が少ないため、法面緑化、芝生の土壌改良、クラウンドの土壌改良、畑や花壇の土壌改良など、さまざまな用途に使用できます。

培養土は、「ひむかバーク」と、宮崎県南部などの霧島系火山帯で採取できる硬い軽石「ボラ土」に、有機肥料を配合したもの。保水と水はけのバランスがよく、花壇やプランターでそのまま使えて便利です。培養土に配合される有機ミネラル発酵有機肥料(牛ふん堆肥・鶏ふん肥料)は、地元の上質な家畜の糞尿が原料。原料を何度も切り替えしを行うことで、樹皮と家畜糞尿が発酵し、ふかふかな栄養満点の土壌になります。

「ホームセンターの園芸スタッフは、弊社の商品が一番いいと言ってくださって、お客様にもおすすめしてくれています。一度使えばそのコスパの高さは分かるはずですよ」

バーク堆肥

花と野菜の土

また、エコロでは堆肥の販売と合わせて、農地の土壌分析を行っているところも大きなポイント。専門家とともに農園の土壌を分析し、土の状態に合った肥料や土壌改良材を提案するなど、農家たちの悩みを総合的にサポートしています。